きっぷのルール

第3セクター鉄道の意味とJRを間に挟む場合の切符のルール計算法

こんにちは。
鉄道で日本を旅するのが大好き
「てりん」(@terinn2019)
と申します。

 

今回は、新幹線の新規開業などで全国のあちこちに勢力が拡大している(?)第3セクター鉄道のお話です。

「そもそも第3セクターって何?」という話から
「ややこしすぎて笑いが出てしまう、3セクとJRをまたがって乗る場合のきっぷのルール」まで、書いていこうと思います。

 

JRのジレンマから生まれた?第3セクター

「第3セクター」とは、国や地方公共団体と、民間企業が共同で出資して事業を運営する制度です。

たとえば、青森県の旧JR東北本線区間を運営する「青い森鉄道」の場合
線路は青森県が保有し、その線路を使用しての鉄道事業の運営などは、民間企業である「青い森鉄道株式会社」が行っているという、いわゆる「上下分離方式」で運営されています。

 

簡単に言うと
「国鉄」と「私鉄」の中間みたいな存在です。

中央集権国家の樹立や日本の流通網の拡大、地元民の足としての鉄道事業の維持など、公の目的で作られた「国鉄」と

事業として鉄道を敷き、利益を得る目的で運営する「私鉄」では、単に運営者が違うというだけでなく、そもそも作られた目的が異なるという性質があります。

 

かつて「公の鉄道」であった国鉄が民営化して「私鉄」となったJRには、矛盾が生まれてしまいました。

もともと公的な使命を持って日本中の隅々にまで敷かれた鉄道を引き継いだJRに、「一般企業として利益を追求する」という使命がのしかかったのです。

 

要するに
「あちこちに乗客が少ない赤字のローカル線を背負った状態で、利益を出すように求められた」ということですね。
(国鉄時代も「公社」として利益を求められていましたが、やっぱり一般企業になると全然次元が違います)
まるで「借金だらけで倒産寸前の父親の会社を引き継いだ子供」みたいな感じですね。

 

そのような背景の中で、JRは赤字ローカル線の廃止を加速していきました。
多くはバス路線に転換していきましたが、中には鉄道のまま残して欲しいという要望など諸事情があり、転換が難しい路線も登場しました。

そこで、かつてのように国や公共団体が一手に引き受けるのではなく、一般企業と共同で運営することで、かつての国鉄時代に完全に逆戻りすることなく、一般企業の経営ノウハウなども取り入れた上で運営できる鉄道事業者ができることになりました。

これが、第3セクター誕生のおおまかな流れです。

 

整備新幹線(北陸新幹線や北海道新幹線など)は、開業した場合、並行する在来線は第3セクター化するということが法律で定められており、今後は北陸新幹線や北海道新幹線の延伸区間(金沢~福井~敦賀間や、函館~倶知安~小樽間など)が3セク化する可能性があります。

一方で、北海道新幹線の小樽~札幌間だけはJRのまま存続する予定があるなど(ドル箱路線なので)、「JRにひいきしすぎててズルい!」という声もあるようです・・・(そう思われても仕方ないですけどね)

 

3セクとJRをまたぐときの「ややこしい」きっぷのルール

ここからは実用的な話。
第3セクター線(以下「3セク」)の路線を乗るとき、きっぷのルールはどのようになるのでしょうか?

 

3セク路線内のみの区間を移動する場合は非常にシンプル。
普通のJRや私鉄のように、運賃表にしたがってきっぷを買ったり、列車内の運賃箱にお金を入れるだけです。
定期券の購入方法など細かいルールは違う場合があるので、注意しましょう。

 

問題なのは「3セク」と「JR」の路線をまたいで利用する場合です。
「JR」→「3セク」→「JR」と、3セク路線をサンドイッチするようなルートで進む場合もよくあるケースでしょう。
このような場合、きっぷのルールはどうなるのでしょうか?
「運賃計算の方法」「有効期限」「途中下車」「意外な落とし穴」の順に書いていきます。

 

なお、ここでは、大阪から鳥取まで「スーパーはくと」号の自由席で移動した場合を例にします。
この「スーパーはくと」は、上郡駅~智頭駅間を3セクの「智頭急行」を経由して京都・大阪~鳥取を結ぶ特急列車です。
つまり「大阪~上郡」はJR、「上郡~智頭」は3セク、「智頭~鳥取」は再度JRと、3セクをサンドイッチするルートになるわけです。

 

 

1.運賃計算の方法

きっぷの値段は以下の2つのきっぷ代を合計したものです。

 

●3セク路線内の乗車券運賃・特急券などの料金

●JR線の営業キロで算出した運賃・料金。
なお、3セクを挟んで前後にJR線がある場合、前後のJR線の営業キロを合計し、それをもとに運賃・料金を算出する(前後のそれぞれの区間のきっぷ代を足すわけではない)

 

今回の例の場合

1.智頭急行の上郡間~智頭間の運賃・特急料金 合計1720円
(運賃1300円・料金420円)

2.大阪~上郡間の営業キロ122.7キロと、智頭~鳥取間31.9キロを合計した154.6キロを元に、運賃表で運賃・特急券料金を算出した合計4750円(運賃2590円・料金2160円)

1720+4750=6470円が片道のきっぷ代となります。

 

 

表現を変えると
「間に3セク区間を挟んでも、JR区間のきっぷ代は通しで計算できる」
ということになりますね。

 

 

2.有効期間

3セクが間に挟まっても、個別に分けて考える必要はありません。
JR区間も含めた全区間の営業キロを合計し、そのキロをもとにJRの有効期間の計算法で有効期間を算出します。

今回の例では、大阪~鳥取の営業キロは210.7キロなので、片道あたりの乗車券の有効期間は3日間となります。
(特急券は距離にかかわらず1日のみ有効です)

 

 

3.途中下車

3セク区間も含めた営業キロが101キロ以上の場合には、3セク区間内の駅も含めて途中下車が可能です。
なお、規則上は「鉄道会社が、途中下車できない駅を指定できる」とあるので、事前に目的の駅が途中下車できるかどうか、念のために確認しておいたほうがいいかもしれません。
なお、JRの駅は大丈夫です。(2018年現在)

 

 

4.意外な落とし穴

3セク路線を挟んだきっぷを買う場合「え、そうなの?」と思うような意外なルールが存在します。
そのごくごく一部ですが、ご紹介しましょう。
(各ケースの具体的な事例は2019年1月現在のものです)

 

ケース1:連続乗車券が作れない!!

直江津~上越妙高駅間で「えちごトキめき鉄道」をサンドイッチで挟んで乗車券を作る場合、なぜか連続乗車券での発行が出来ないといわれ断られてしまいました。(片道・往復での購入は可能との事)
ほかの3セク路線ではどうなのか?については調査しておりません・・・。

連続乗車券を使い、ちょっとした区間だけ折り返して、乗車券の有効期間を稼ぐテクニックがありますが、この方法が使えないことになるので注意が必要です。

 

ケース2:そもそも通しの乗車券が作れない!!

今まで説明してきたような「3セクとJRの通しのきっぷ」を発行できるかどうかは、「3セク各社とJRが連絡運輸の協定を結んでいるかどうか」で決まっています。

たとえば、六日町~犀潟間の「北越急行ほくほく線」の場合
連絡運輸の協定を結んでいるのはJR東日本と東海の一部区域のみなので、それ以外のエリアから発着する乗車券の場合、ほくほく線を経由する通しの乗車券が作れないのです。(北陸新幹線の開業により、連絡運輸の区域が縮小した結果)

 

なので
「名古屋市内~東京~六日町~犀潟~直江津」の乗車券を作ることは可能ですが
「大阪市内~東京~六日町~犀潟~直江津」の乗車券を作ることは不可能ということになります。(東海道新幹線の名古屋より西の区間はJR東海の管轄駅であっても、連絡運輸の対象外)

 

う~ん、あまりにもややこしい。

これ以外にもいろいろ落とし穴があるようで、いずれかの理由により乗車券の発行ができなくなり、窓口の係員さんも重箱の隅をつついたような規則まで完璧に覚えているわけがなく、意味がわからず困惑・・・となるケースが多くあると考えられます。

 

3セクを挟むきっぷを買う場合は、私たち購入者側もかなりの勉強をしてから臨んだほうがよさそうですね。

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