こんにちは。
日本を鉄道で旅するのが大好き。
「てりん」と申します。
近年、大きな再開発により
雨後のタケノコのようにタワーマンションが次々と建設され、気づけば神奈川を代表する一大住宅地となった
「今、もっとも熱い街」武蔵小杉駅周辺。
※夕暮れのタワーマンション群。(駅のホームから撮影)
おかげで人口密度がとんでもないことになってしまい、朝のラッシュ時には駅の改札をくぐるだけで20分近く並ぶこともあるとかないとか。
何かと話題に事欠かない武蔵小杉。
この街が、なぜこれほどの急成長を遂げることができたのか?
いろいろ理由はあるのでしょうが
「交通の便が良い」ことがその一因であることは間違いないでしょう。
いまや「新宿を超えた」(アド街ック天国でそう言ってた)といわれるほどに発展した立川まで乗り換え無しでいける「南武線」
さらに、品川・東京や、横浜に乗り換え無しで行くことができる「あの路線」だってあるじゃないですか。
そりゃ、人が集まるに決まってますよね。
「・・・あれ?
もう一つの路線って、あれ何っていうんだったっけ・・?」
※武蔵小杉駅の、湘南新宿ラインが発着するホームの駅名標。
ひとつの路線にナンバリングが2つもある時点でカオス
そう。
実は、この路線にはちゃんと正式名称があるのですが、武蔵小杉在住の人であっても、おそらく知っている人は
「1タワマンにつき5人くらい」がいいとこじゃないでしょうか。
ということで
今回は「あの路線の名前の謎」に迫ってみたいと思います。
「湘南新宿ライン」なんて存在しない?!
そうだ
やってくる列車の名前を見ればすぐに分かるじゃないか!
ということで、さっそく電光掲示板を見てみましょう。
右を見れば
「東海道線」「横須賀線」
左を見れば
「湘南新宿ライン」「横須賀線」
なるほど わからん!
この路線はいったいなんなんでしょうか?
では、推理していきましょう。
先ほどの電光掲示板にあったように
「東海道線」
「横須賀線」
「湘南新宿ライン」
のどれかには間違いないようです。
この中で、真っ先に候補から外れるものが一つあります。
それは「湘南新宿ライン」。
じつは湘南新宿ラインというのは正式な路線名ではなく、愛称(通称)名なのです。
正確にいうと
「東海道線(小田原方面)から山手線の大崎・渋谷・新宿を経由して、宇都宮線または高崎線の駅へ向かうルートおよびそのルートを走る電車の愛称」ということになります。
なので、武蔵小杉駅や西大井駅は
「湘南新宿ラインの一部」とは言えますが、正式な路線名ではないのです。
となると、残りは
「東海道線」「横須賀線」のどちらかということになりますが・・・。
きっぷは答えを知っている?
ここに、一枚のきっぷがあります。
経路に「横須賀線」という文字が書かれているのが見えますか?
これは、荻窪から中央線で立川へ。
立川からは南武線で武蔵小杉駅まで向かい、そこからこの謎の路線で品川まで向かうという経路のきっぷです。
つまり
きっぷ的にはこの路線は「横須賀線」ということなんですね。
はい、解決解決。
答えは横須賀線なのでした。
ずいぶんとあっけない幕切れ・・・。
ただ、僕は慎重深い男なので
念押しで、確認しておきましょうね。
’’横須賀線(よこすかせん)は、神奈川県鎌倉市の大船駅から神奈川県横須賀市の久里浜駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(幹線)である。’’(ウィキペディアより)
あれ・・・?
武蔵小杉は・・・?
ちなみに、この後に続く文言として
’’一般的には東京都千代田区の東京駅から品川駅、東海道本線の貨物支線である品鶴線、横浜駅、大船駅と経由し久里浜駅を結ぶ運転系統の呼称として使われている。’’(ウィキペディアより)
と、あります。
どうも、この「貨物支線」というのが怪しいようです・・・。
インド人もびっくり!衝撃の近未来予測
・・・と、推理ミステリーっぽくやってきましたが
僕は最初から真相を知ってるので、そろそろ答えを書きますね。(ええっ?!)
品川(湘南新宿ラインは大崎)から西大井〜武蔵小杉〜新川崎〜横浜に至るこの路線は、実はもともと貨物列車専用の路線だったのです。
ところが、昭和の高度経済成長期に
大きな問題が発生します。それが
「通勤ラッシュ地獄」
今も中央線や常磐線など、東京の路線の混雑具合はひどいものですが
昭和30年代〜40年代、特に混雑がひどいとされていたのが
「東海道線」と「横須賀線」。
現在、この2つの路線は
横浜市の戸塚から東京方面に路線が2つに分かれるため、その分列車も多く走らせることができるため混雑が比較的緩和されています。
しかし、この当時は
大船〜横浜〜東京までの区間は東海道線と横須賀線がどちらも同じ線路を使って運転されていたのです!(現在の東海道線(上野東京ライン)のルート)
そりゃもう、詰まること詰まること。
湘南エリアは特に人口が多いエリアで、高度経済成長でさらに利用客が増加することが予測されていました。
そして当時の国鉄は
あまりにも衝撃的な試算を叩き出すのです。
それは
「横須賀線専用の線路を増設する工事をしなければ、近い将来横須賀線の朝の通勤ラッシュ時の乗車率は500%近くになる」
・・・悪夢のような予測。
乗車率500%とは、普通の通勤電車の定員の5倍の人がすし詰めになっているということ。定員には、立っている乗客もある程度含みます。一般的なJRの一両あたりの定員は140人くらいなので、700人がすし詰めになる計算に・・・って、それは雑技団でもムリ。
※この車両ひとつに700人は絶対にムリ・・・(ちなみに物理的に限界な乗車率は320%くらいだそうです)
「インドじゃあるまいし、そんな混雑した電車に乗ってられるか!」
ということで、横須賀線専用の線路を増設することになりました。
とはいえ、一から全部作り始めたらお金も時間もとんでもないことになってしまうので、すでに存在している路線も活用することになりました。
それが
貨物列車専用路線、通称「品鶴線」だったのです。
(読みはひんかくせん。品川と鶴見を結んでいるため)
貨物列車用に使っていた路線を、旅客用の電車が利用できるようにしたのですね。
品鶴線はあくまでも通称名で
正式には「東海道本線に所属する貨物支線」
要するに「東海道本線」なのです。
やっと答えが出ましたね。
そう、この品川〜武蔵小杉〜横浜を結ぶ路線は「東海道本線」だったのです!!
とはいえ、流れとしては
「横須賀線のために旅客営業用に使い始めた路線」なので、きっぷや駅の案内などには横須賀線と表記されているわけです。
おしまい。
ところで
「「東海道本線」と「東海道線」っていうのはまた違うものなのか?」
という、微妙な違和感に気づいた方もいるかもしれません。
「東海道本線」と「東海道線」の違い
●東海道本線・・・東京〜静岡〜名古屋〜京都〜大阪〜神戸を結ぶJR路線の正式名称(日本史で習ったやつです)
※この路線の新幹線バージョンが「東海道新幹線」
●東海道線・・・東海道本線のうち、JR東日本のエリア(東京〜熱海間)を走る電車のことを、通称としてこのように呼ぶ(なんで「本」を抜いたのかは僕にはわかりませんが、多分こっちの方が発音しやすいというような理由でしょう)
※この色の電車のことを「東海道線」と呼ぶ、というイメージ。なので、「品鶴線=東海道線」というのはニュアンスが違ってくる
※千葉駅の案内板。
「総武線」と「総武本線」の2種類がある。
「総武線」は千葉から東、東京や御茶ノ水までの区間。
「総武本線」は千葉から西、銚子までの区間を指す。
発音のしやすさを重視するなら、全区間「総武線」にすればいいのに・・・。謎は深まるばかりである
電車の名前って
ほんっっと、ややこしいですねぇ。
鶴見駅からは乗れないチート仕様
この路線が通称「品鶴線」と呼ばれることは先ほども書いた通り。
品川駅と鶴見駅を結ぶ品鶴線ですから、もちろん鶴見駅からも乗れる・・・かと思いきや
実は、鶴見駅からは
品鶴線には乗れない!!!のです。
なんということでせう。
鶴見から品鶴線に乗るためには
横浜駅で横須賀線などに乗り換えるか、あるいは川崎駅まで行って南武線で武蔵小杉まで行かないと乗ることができません。
あくまでも元々は貨物専用路線だったので、路線上は鶴見までだったとしても、鶴見駅で人の乗り降りなどができるようには出来てなかったわけですね。
まとめ
●品川〜武蔵小杉〜横浜間を結ぶ路線の正式な路線名は「東海道本線(の支線)」
もともとは貨物専用路線だった。
●通称名は「品鶴線」
でも、鶴見で乗り降りはできないチート仕様。
●きっぷ上や営業案内上は「横須賀線」と表記。
でも湘南新宿ラインも走る。
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