今回は、JRの往復割引について解説します。
特に、東京~大阪の新幹線区間を例にとって進めていきます。
「この区間は往復割引ムリって聞いたけど・・・」
「仮に割引可能としても、そんなに安くならないでしょう?」
いえいえ。
場合によっては、定価の運賃よりも実質2500円以上も安くなるケースだってあるんですよ!
実はとっても奥が深い、JRの往復割引の世界。
さっそく覗いてみましょう。
(この記事のきっぷ代などの値段はすべて2019年1月現在のものです)
往復割引の概要
JRにおける往復割引とは
「片道あたり営業キロが601キロ以上の駅間を事前に往復乗車券として購入すると、片道あたりの乗車券が1割引になる」
というものです。
営業キロとは、きっぷの計算用に設定された駅間の距離のことですが、実際のレールの距離と等しいことが多いので、ここでは単純に「駅と駅の間のレールの距離なんだな」というくらいの認識で大丈夫です。
東京駅からだと、北は八戸駅から以北
西は兵庫県の明石駅やから以西
大阪駅からだと、西は博多駅から以西
東は埼玉県の熊谷、千葉県の袖ヶ浦、栃木県の小山駅あたりより先が601キロ以上となります(いずれの場合も東京駅経由の場合)。
最大のポイントは「事前に往復乗車券として購入する」という点です。
つまり「出発前に行きと帰りのきっぷをセットで買っておかないとダメ」ということですね。
たとえば、東京駅で東京から八戸の片道乗車券を買って、帰りのきっぷを八戸駅で買った場合には、往復割引は適用されないということになります。
※行きの帰りと帰りのきっぷを同時に買うと、「乗車券(ゆき)」「乗車券(かえり)」と印字される。右下の「復割」とは「往復割引」の略で、1割引されているという証拠となっている
往復割引の計算方法
割引率については「片道あたりの乗車券が1割引になる」という、ちょっとややこしい言い回しになっていますが、具体例で説明しましょう。
東京と兵庫県の明石駅の乗車券を往復で買う場合で考えてみます。
片道あたりの運賃は9610円(608.9キロ)。
往復乗車券で買うと、この9610円が1割引になるということになります。
計算方法は、運賃に0.9を掛け算すれば出てきます。
9610×0.9= 8649
計算で出た1の位の数は切り捨て(四捨五入などせず、全て0にする)となるので
8640円。これが片道の割引運賃になります。
よって、往復の割引後の運賃は
8640×2= 17280円
ということになります。
わざわざ「片道あたりの乗車券が1割引になる」という表現をしているのは
「往復の運賃を1割引するわけではない」ということを伝えているわけです。
(普通運賃の往復運賃(9610円×2=19220円)を1割引すると
19220×0.9=17298円
切捨てで17290円
となり、10円の差ではあるが計算結果が変わってしまう。
大した差ではないといえ計算結果が変わるので、片道を1割引したものを2倍するクセをつけておこう)
なお、この割引は学割とダブルで適用することも可能です。
その計算方法についてはコチラを参照
>>>JR学割きっぷの値段の計算方法 スマホ電卓で計算できる!
有効期間にご用心!
あらかじめ往復乗車券を買う場合に気をつけないといけないのは「きっぷの有効期間」です。
JRの乗車券の片道601キロ以上の場合の有効期間の計算方法は以下の通り。
(片道の営業キロ÷200)+1日 の2倍
※営業キロが200の倍数でない場合は、1つ上の200の倍数に切り上げる
(営業キロが601キロの場合は、800として計算する)
東京~明石の往復乗車券の場合
片道が608.9キロなので、800キロと換算して計算します。
(800÷200)+1= 5日
5日の2倍なので、有効期間は10日間となります。
なので、仮に8月1日に出発する場合、8月9日までに帰ってこないと往復乗車券は紙切れになってしまうわけですね。
長期間の旅行(実家への帰省など)の場合には、有効期間を超えてしまう可能性があるので、その場合はスケジュール調整をするか、割引はあきらめて片道乗車券を帰りの駅で買いましょうね。
東京~大阪は往復割引適用される?
片道601キロ以上ならとってもお得な往復割引ですが
日本を代表する新幹線の区間といえる「東京~大阪間」は往復割引が適用されるのでしょうか?
・・・
・・・
・・・残念っ!(波田陽区風に)
東京駅~大阪駅間は片道556.4キロしかありません。
なので、残念ながら往復割引は適用されないのです。残念。
・・・が、それはあくまでも
「東京~大阪間のきっぷを買った場合」の話。
実は、JRのきっぷというのは
「ルートの途中にある駅から乗りはじめてもいいし、最終目的地の手前で旅行を終えてもよい」
というルールになっています。
たとえば
「東京~大阪間の乗車券(東海道新幹線経由)を持った状態で、新横浜駅から乗り始めて、ルートの途中にある京都駅で降りてそのまま大阪まで行かなくても問題ない」ということになります(「ぷらっとこだま」など、一部の旅行プランや特殊な乗車券をのぞく)
このルールをちょこっと応用すれば
「東京から明石までの往復乗車券を買って往復割引を適用。
行きは東京からルートの途中である大阪駅で降りて、それで旅行終了。
帰りはルートの途中である大阪駅から乗って、東京駅まで行く」ということも可能になるわけです。
●東京~大阪間(片道556.4キロ)
片道8750円 往復割引は適用不可
よって往復で17500円
※乗車券は「東京都区内~大阪市内」となる
●東京~明石間(片道608.9キロ)
片道9610円、往復割引で8640円
よって往復で17280円
※乗車券は「東京都区内~明石」となる
なんと!!
東京~明石の往復乗車券を買って、大阪で乗り降りするほうが220円安くなる!!
結論。
実質、東京~大阪間の往復割引乗車券を買うことは可能なのでした。
・・・と、ここまでは
ヤフーニュースなんかでもたまに見かける程度のお話。
ここから先は、さらなる応用編のお話です。
東京~大阪間の往復乗車券の応用編
仮に、大阪在住のAさんが、東京を往復するために「明石~東京」の往復乗車券を買ったとしましょう。
そこでAさん、ふとこんなことを考えました。
Aさん
せっかく明石のきっぷを持ってるんなら、明石に行って玉子焼き(明石焼き)やタコめしを堪能したい!
とはいえ、あくまでメインは大阪~東京の往復。
この往復のついでに明石に行くのはスケジュール的にかなりキツイと思いますが、いったいどうすればいいのでしょう?
そこで、こんな方法をとることにしました。
大阪から東京へ旅行する日を8月7日・8日の土日だとしましょう。
まずは、8月1日(日曜日)から使用開始の明石~東京の往復乗車券を購入します。
そして8月1日に、大阪から明石までの乗車券を購入し、明石へ行くのです。
明石までの片道乗車券の運賃は920円。
明石で玉子焼き、タコめしなどを堪能します。
さて、大阪へ帰りましょう。
この際、帰りのきっぷは、新たに明石から大阪までの920円の乗車券を買う・・・
必要は無く、この「明石~東京の往復乗車券」を改札に通せばよいのです。
すると、大阪までこのきっぷで帰ることが出来るのです。
JRの乗車券は、原則として途中下車ができます。
これは「片道101キロ以上の乗車券では、最終目的地までのルートの途中にある駅で、きっぷを回収されること無く改札を出ることができ、観光などをすることができる(一部例外あり)」というものです。
途中下車の期間は、乗車券の有効期間内であれば何日間でも可能です。
よって
8月1日に明石~東京の行きの乗車券でルートの途中の駅である大阪駅で途中下車し、翌週の8月7日土曜日にふたたび大阪駅から東京に向けて旅行を再開することも可能というわけです。(明石~東京の往復乗車券の有効期間は10日間なので、8月1日から10日まで使用することが出来る)
この一連の流れで
8月1日の明石から大阪の帰りのきっぷ代がタダになっていることにお気づきでしょうか?
このような往復割引乗車券を使うことによって、地元の身近な場所に片道タダ同然で旅行することが出来るのです。
逆に、先に7月31日・8月1日の土日で大阪~東京を往復し、帰りのきっぷで大阪駅で途中下車。
8月7日土曜日に東京~明石の帰りのきっぷで明石までタダ同然で向かい、帰りは920円のきっぷを買って大阪に帰る・・・というスケジュールも可能です。(7月31日から8月9日まで乗車券は有効)
シフト制などである程度休みを自由に選べるなら
乗車券の有効期間内に明石~大阪片道タダ旅行を2回することも可能ですね。
逆に、東京在住の人が大阪に向かう際に、似たようなことをしたい場合は
こんな風にすればいいわけです。
Bさん
大阪へ行くついでに、その前の週に東京ドイツ村に行ってみたい!
東京ドイツ村の最寄り駅は千葉県の袖ヶ浦(そでがうら)駅で、袖ヶ浦~大阪は片道623.8キロ(総武線経由)で往復割引が適用され、往復17280円となります。
要するに、片道の距離が601キロ以上になるように、往復乗車券のスタート地点を大阪から遠くにずらせば良いのです。
東京~袖ヶ浦の片道は1140円なので、これが片道タダになるのは大きいですね。
(ドイツ村へは高速バスの方が安いかもしれませんが、その辺はここでは気にしません)
大阪発はさらに嬉しい特典が
実は、大阪発の場合にはさらに嬉しい特典があります。
それは「往復乗車券を、東京都心のフリーパスのように使うことが出来る」というものです。
・・・が、ここで書くと結構なボリュームになってしまうので
詳しくはこの記事を参照してください。
普通の切符が東京フリーパスに?JR70条区間途中下車や新幹線ルール(別タブで開きます)
このテクニックを使えば、たとえば明石~川口(埼玉県の駅)の往復乗車券(17280円)を買うと
前述の明石~大阪片道タダ旅行に加え、山手線などの東京の都心の駅(俗に言う70条区間)のほとんどの駅で途中下車して観光することが可能です。
つまり「東京のフリーパスが実質不要」ということ!
※70条区間(図の中の太線の区間)
東京都心のJRのフリーパス(都区内パス)は1日あたり750円なので(2019年1月現在)
土日ともフリーパスとして使えることを考えると、実質1500円分オトクだと考えてよいでしょう。
東京~大阪の往復乗車券の定価より220円安い+明石~大阪の乗車券が実質タダ(920円)+土日の都区内パスとして使える(1500円)=定価よりも2640円もオトク!
どうですか?
往復割引、案外捨てたものじゃないでしょう?
やろうと思えばオトク額はもっと大きくすることができますが、それはまた、別の話・・・。
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