きっぷのルール

なぜICカード乗車券は振替輸送の対象外?紙のきっぷの方がいいの?

小田急ロマンスカー

通勤通学、ちょっとしたおでかけや買い物まで
日常のあらゆる場面で大活躍する「交通系ICカード」。

 

完全無欠に見える魔法のカードですが
ちょっと、気になることがあるんです。それは

「人身事故発生時などの振替輸送の対象外」

ということ。

 

※え、suicaは振替輸送の対象外・・・?
今時みんなsuicaやICOCAなどのICカードを使っているのに・・・。
どうして?じゃあどうしたらいいの?

 

今回は、もしも
ともに新宿と小田原を結ぶ、小田急とJR(湘南新宿ライン)で振替輸送が起きたら・・・?

というお話をもとに解説をしていきます。

 

関東のお話になりますが
関西など他エリアでもほぼ同じルールになっているので、最後まで読んでいってくださいね!

 

※新宿と小田原を結ぶ、小田急とJR(湘南新宿ライン)の概略図。
新宿~小田原間の紙のきっぷ代は小田急は910円、JRは1520円

なぜICでは振替輸送が受けられないのか?

振替輸送の基礎知識

「なんで、ICだと振替輸送が受けられないの?」

その本題に入る前に
まずは振替輸送の基本を押さえておきましょう。

振替輸送とは?

「鉄道会社A社」の路線が、乗車中に人身事故などで不通になり、目的地の駅まで行けなくなってしまった場合に
あらかじめA社の路線のきっぷを持っている人(=きっぷ代を払って電車に乗っている人)が、並行する(似たようなルートを走る)B社の路線に、A社のきっぷで電車に乗り、目的地まで移動できる制度。

※ここでいう「きっぷ」には、回数券や定期券も含まれる

振替輸送の対象となる路線は、鉄道会社の判断で決まります。
その時の状況(事故が起きた場所など)によって変わる場合があります。

今回は「小田急で事故が起こり、町田駅でJRに振替輸送する」という例で解説していますが、町田で振替するかどうかは事態が起こるまでわかりませんのでご注意を!

 

例:新宿から小田原まで小田急線で移動中、人身事故のため小田急が運転見合わせになり、振替輸送で町田からJRに乗り換え、JR横浜線を経由して小田原まで行くことになった場合

紙のきっぷ(910円)を持っている場合や、小田急の新宿~小田原間の定期券(IC、紙どちらも可)を持っている場合は、そのきっぷ・定期券でJRに乗って小田原まで移動できる(追加できっぷ代を払う必要なし)

JRで小田原まで移動することになっても、追加のきっぷ代を払う必要はありません(910円と、JRの新宿~小田原のきっぷ代1520円との差額を払わなくても良い)

 

これが、振替輸送の基本です。

ところが、ICカードだとうまくいかないことがあるようで・・・。

IC乗車券では振替輸送が受けられない!なんで?

定期券であれば、紙でもICでも振替輸送の対象となりますが

いわゆる「IC乗車券」は、振替輸送の対象外になっています。

「IC乗車券」と「IC定期券」

「IC乗車券」とは
改札をタッチして、そのつど乗り降りした区間に応じてチャージした金額が引き落とされる仕組みのことを言います。

なのでIC定期券を使って、旅行先など定期券の区間外を利用する場合も、そのときは実質「IC乗車券」として使っていることになり、振替輸送の対象外になります。

「自分が持っているカードはIC定期券だから大丈夫!」
ということではないので、勘違いのないように。

なんで
IC乗車券は対象外なんでしょう??

 

一言でまとめるなら
『鉄道会社の手間がかかりすぎる』
ということ。

 

ポイントは、さきほどの振り替え輸送の説明にもあった
あらかじめ(事前に)目的地までのきっぷ代を払っているかどうか」
という点。

紙のきっぷや定期券を買う場合は、あらかじめ購入金額が書かれている(定期券の場合区間がはっきり書いてある)ので、すでにその人が小田原までのきっぷ代を払っているかどうかがすぐに分かるんですね。

ところが、IC乗車券は
見ただけではいくらチャージされているか分からないし、振替輸送をする駅(つまり、小田原ではない駅)で901円※を引き落とすのか、などややこしい手続きになってしまうので処理にすごく時間がかかるんです。

※(小田急の新宿→小田原間は、IC利用だと901円)

 

例えば、小田急の改札を通ったときに200円しかチャージがなかった人がJRで振替をするとなったときには

1.差額の701円を小田急の振替する駅の有人改札で支払う。または、901円以上になるまでICカードをチャージし、残高を駅員さんに確認してもらい、かつ901円をチャージから引き落とす
(これで、小田急に対し901円支払ったことになる)

2.駅員さんに、振替票をもらう。振替票という制度が無い場合、JRの駅員さんに小田急で901円払ったことを証明し、JRの改札を通してもらう

こんな感じの
めちゃくちゃ面倒くさい手順を踏まないといけないわけです。
(もともと901円以上ICカードにチャージしてても、駅員さんの手間はさほど変わらないでしょう)

いっぽう、定期券なら
小田原まで有効なきっぷであるということが一目でわかるし

紙のきっぷ(新宿から910円区間と書かれたきっぷ)も、一目見ればわかるでしょう。
(マニアックな駅発のきっぷだとちょっと駅員さんが手間取るかもしれないけど)

 

過去には
JR西日本や関西の私鉄はIC乗車券でも振替輸送を実施していましたが、やはり手続きがややこしく混雑がひどくなることが多かったようで、IC乗車券は対象外になった経緯があります。

近畿のJR・私鉄の振り替え輸送、ICカードは対象外に(日経新聞)

 

「なにそれ?納得いかない!」

はい。
僕含め多くの人が、理解はできても納得はしていないはず・・・。

仕方がないので
「IC乗車券で移動中に電車が止まったら、どうなっちゃうのか?」
を押さえておきましょう。

IC乗車券で乗車中に電車が止まったら、きっぷ代はどうなる?

繰り返しになりますが
IC乗車券は振替輸送の対象にはなりません。

といっても
別に「B社の路線に乗り換えさせてもらえない」とか「改札の外に出してもらえない」という意味ではありませんよ!

「対象にならない」というのは、あくまでも「本来のA社のきっぷ代で目的地まで行くことはできない」という、きっぷ代に関する部分を言っているだけです。

 

じゃあ
IC乗車券で乗車中に電車が不通になってしまったら、どうなるのか?

 

シンプルに
「普通に移動する場合と同じルールできっぷ代が引き落とされる」
だけです。

 

例:新宿から小田原まで、IC乗車券で小田急線に乗って移動中、人身事故のため小田急が運転見合わせになり、町田でJRに乗り換えて、JR横浜線を経由して小田原まで行くことになった場合

普通にICカードをタッチして、電車を乗り継ぐだけ。
具体的には、以下の通り。

まず、町田駅でICカードをタッチし、改札の外に出る。
この時、新宿~町田の小田急のきっぷ代387円が引き落される。

次にJR町田駅でICカードをタッチし入場。
JR小田原駅到着後、ICカードをタッチして改札の外に出る。
この時、町田~小田原のJRのきっぷ代1166円が引き落される。

よって
387円+1166円=1553円のきっぷ代を払うことになる。

 

きっぷ代の高いJRに乗り換えた上に、横浜線を経由(遠回り)することになったため

きっぷ代は本来の910円(ICなら901円)で済むところを、倍近くの1553円も払うハメになってしまったのです・・・

 

ICよりも、紙のきっぷのほうがいいの?

IC乗車券では振替輸送が使えない以上

今回の小田急のような例では、万一のことを考えると紙のきっぷで移動したほうが安心といえるでしょう。

逆に、きっぷ代の高いほうの路線(今回の例ではJR)を利用する場合はあまり気にしなくてもよいですね。

 

私鉄の株主優待券など、一部の紙のきっぷでは振替輸送が認められないことがあるので要注意!

小田急の株主優待券(1回、小田急線の好きな駅まで乗れる)も振替輸送の対象外です。

仮に、新宿から小田原まで
金券ショップで600円で買った小田急の株主優待券1枚だけで移動しようと思っていたのに、先ほどの例のように町田でJRに乗り換えるハメになった場合

・新宿から町田までのきっぷ代 600円(優待券)
・町田から小田原までのJRのきっぷ代 1166円
合計1766円

1800円近くも払うという、悲惨なことが起こる可能性もあります・・・泣。

 

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