きっぷのルール

9割の人が勘違い?電車のキセル乗車とは何?仕組みや語源は?

こんにちは。
日本を鉄道で旅するのが大好き。
「てりん」と申します。

 

とりあえず
「よくないこと」「犯罪」
ということはわかる気がする「キセル乗車」という言葉。

いったい、どのような行為がキセルなのか?
なぜキセルと呼ばれるのか?

厳しくチェックすれば(?)おそらく9割の人は勘違いしているであろうこの「キセル乗車」について、今回は解説します。

 

まずは、多くの人が勘違いしている
「不正乗車」という言葉と「キセル乗車」の関係を整理していきましょう!

「キセル乗車」ってどういう意味?

正しくきっぷを買わないのが「不正乗車」

「不正乗車」とは
「目的地までの正しいきっぷを買わないで列車に乗る方法の総称」です。

 

なので、たとえば
「きっぷを買わず、無理やり自動改札機をジャンプで飛び越えて通過する」
なんてパワープレイも「不正乗車」だし

「特殊な技術を使って、ICカードの履歴を不正に書き換えて定価より安い金額で改札を通過する」
などという超頭脳プレイも「不正乗車」だし

「きっぷをカラーコピーして使う!」
などという、体力も頭もろくに使ってないプレイも「不正乗車」だといえます。

 

とにかく、ちゃんとお金を払わずに電車に乗る行為をまとめて「不正乗車」と呼ぶわけですね!

 

「キセル乗車」は
数ある「不正乗車」の方法の中のひとつに過ぎません。

「キセル乗車」=「不正乗車」ですが
「不正乗車」=「キセル乗車」とは限らないわけですね。

空白の区間を作るのが「キセル乗車」

「江戸時代のタバコ」である「キセル」

厳密にはタバコを吸うための道具ですが(喫煙具)
その形状は「両端(口をつけるところと煙が出るところ」は金でできており、間の部分は金ではなく竹などの木材を使って作られていた」そうです。

※昔の喫煙グッズ、キセル。
両端は金色をしているが、中間は木目のようなものでできている

 

キセル乗車の意味は
「途中の区間が空白になるように2枚以上のきっぷを購入し、不正に安く旅行すること」です。

最初と最後の区間だけお金を払って、中間の区間はお金を払わないことから、その仕組みがキセルの形状に似ていることが語源だそうですよ!
「お金」と「キセルの金」をかけてるんですね!

 

キセル乗車の具体例

・・・といっても

「中間の区間のお金を払わない?どういうこと?」
頭に「ハテナ」が浮かんでいる方もいることでしょう。

そこで、具体例で説明してみます。

例:大阪駅から新大阪駅までのきっぷと(160円)、有楽町駅から東京駅までのきっぷ(140円)を持って、大阪~東京を移動する

 

大阪駅から新大阪駅までのきっぷを持って大阪駅の改札を通ると、問題なく通過することができます。
そりゃ、当たり前ですね。

しかし、そのまま新大阪で降りず、ひたすら快速や各駅停車を乗り継いで、東京まで向かったとします。

そして、東京駅で、あらかじめ手配しておいた「有楽町から東京までのきっぷ」を使って改札を出るのです。
「東京までのきっぷ」と書いてあるので、一見問題なく出られそうですね。

実際には有楽町駅で入場していないため、エラーが出て自動改札機を通過できないのですが
もし、このまま東京駅の外に出ることが出来たらどうでしょうか?

そう
「新大阪から有楽町までのお金を一切払わず、東京まで移動した」
ということになりますね。

つまり
「大阪~新大阪」「有楽町~東京」という、「両端の区間」のお金だけ支払い、間の区間のお金を一切払わずに電車で移動したことになります。

これこそが、キセル乗車の意味なのです。

本来なら、大阪~東京は8750円のきっぷ代を払わないといけません(新幹線に乗る場合は別途料金が必要)

それを160+140=300円だけ払って移動したとしたら、8450円も不正にお金を払わずに移動したことになります。

 

 

今ではキセルを日常的に行う人はほぼいないと思いますが

かつて自動改札機がまだ無かった時代。
定期券は、普通のきっぷとは違い改札に入るときにいちいちハンコを押したりしないので、ただ駅員さんに見せるだけで改札を出入りすることができました。

そのため、たとえば「大阪~新大阪の定期券」「有楽町~東京の定期券」を持っていれば、ものすごく低いハードルでキセル乗車ができたのです。

 

社会問題にもなったので、国鉄(今のJR)も必死でキセル客を検挙し、罰金としてそれまで不正に浮かせた金額の2倍のお金も含めて100万円以上払うことになったケースもあったようです・・・。

 

空白さえなければ「キセル乗車」ではありません(乗車券分割テクニック)

※複数の区間に分けてきっぷを買うと、トータルのきっぷ代が安くなる?

目的地までのきっぷを、1枚の通しではなく
複数の区間のきっぷに分けて買うことで、トータルのきっぷ代を安くする方法を「乗車券分割テクニック」といいます。

こう言ってもなんのこっちゃかわからんと思うので、具体例で解説しましょう。

 

例:大阪から名古屋までJRで移動する場合

大阪から名古屋まで、1枚の通しのきっぷで買うと、お値段は片道3350円です
(新幹線に乗る場合は別途追加料金が必要)

 

これを以下の区間に区切って、3枚のきっぷに分けて買うと

1.大阪駅から京都駅までの乗車券 560円
2.京都駅から岐阜駅までの乗車券 1940円
3.岐阜駅から名古屋駅までの乗車券 470円

3枚合計 2970円

あら不思議!
1枚の通しで買うよりも、380円安くなってしまいました。

 

それぞれのきっぷの値段は、ヤフーなどの乗り換え案内で簡単に確認できますよ!
ウソだと思ったら、確認してみましょう!

 

キセル乗車のときのように、複数のきっぷを買っていますね。
果たしてこれはキセルなのでしょうか?

 

この場合
「大阪→京都→岐阜→名古屋」という風に、きっぷの区間はつながっているので、空白の区間は存在しません。

なので、これはキセル乗車ではなく、正当なきっぷの買い方なのですよ。

このような3枚のきっぷをもっていても、いちいち京都駅や岐阜駅で一旦降りて改札を出ないといけない、ということはありません。

 

なので
「区間がつながってれば、心配無用!」
と覚えましょう。

割切れぬ人生を今宵は忘れて JR乗車券分割の仕組み注意点

 

ちなみに、金券ショップで定価より結構安いJRの乗車券を見かけたことがありませんか?

 

そもそも乗車券自体が、回数券をバラ売りしてるものなので1枚あたりの値段が安いというのもあるのですが
同時に、この乗車券の分割テクニックも併用しているのです。

 

大阪にある金券ショップでは、「大阪から名古屋までのJR格安きっぷ」という名前の商品が

1.大阪駅から京都駅までの回数券
2.京都駅から岐阜駅までの回数券
3.岐阜駅から名古屋駅までの回数券

の3枚セットとして売られています。
こうして金券ショップは、より安くお客さんにきっぷを提供できるのですね。

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あのアイドルファンの事件は「キセル乗車」じゃなかった?!

最後は、超余談です。
「読んで損する」とまではいいませんが、得はしませんのであしからず。

 

みなさんは、こんなニュースがあったのを覚えていますか?

 

「某国民的アイドルグループのファン同士が手を組み、不正乗車を行ってライブやイベントの遠征費を不正に浮かせていた」

 

その手口は、主にこのような内容だったそうです。

「男Aは、新大阪駅から品川駅まで新幹線で移動した。
Aは新大阪駅には入場券で入っており、品川駅で待っていた男Bが、あらかじめ品川駅に入る際に、品川駅の入場券2枚をほぼ同時に自動改札機に入れ、入場記録のついた入場券のうち1枚をAに渡し、一緒に品川駅の改札を出た」

つまり「Aは新大阪~品川を、新大阪駅と品川駅の入場券で出入りし、新大阪~品川間のきっぷ代を払わずに移動した(Bはその手助けをした)」
というわけです。

 

もし、この内容が全て事実だとすると
実は、Aが行っていたのはキセル乗車ではありません。
単なる不正乗車です。

いったいなぜなのでしょうか?

 

最大のポイントは
「Aが持っていたきっぷが、入場券だった」ということ。

入場券は「駅構内に入るためのきっぷ」であり、「電車に乗ることは一切認められていない」のです。

キセル乗車は
「少なくとも『新大阪から京都までのきっぷ』など、一部区間でも電車に乗るためのきっぷを持っている」ことが前提です。
その上で、空白の区間を作り、きっぷ代を浮かすことが正しい(?)「キセル」なのです。

それが、入場券を持って新幹線に乗ったとなると
「そもそも、新幹線に乗る資格がないのに新幹線に乗って移動した」わけですから、これは単なる不正乗車ということになるのですね。

 

ですので、当時マスコミでは
「組織的にキセル行為が行われていた」と報道されていたようですが、これは日本語的には間違いだった・・・ということになります。

 

「だからどうした?」とか言わないでくださいね。
書いた本人も「どういうオチにしようか・・・」と悩んでいるんですから。

・・・結局、この話はこれでおしまいでーす!

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